企業の買収は、株式の譲渡の形をとることが多いです。
株式を譲り受けて、株主総会の議決をもって、役員を選任することになります。

ところで、中小企業の多くは、株式譲渡にあたって会社の承認が必要であると定款で定めています。日本の中小企業は、株主同士の信頼関係を前提とし成立していることが多く、外部の者が経営に参加することは混乱を招きかねないからです。

会社の承認とは、通常、株主総会の承認を意味します。
そして、譲渡承認の株主総会においては、譲渡株主本人も議決権を行使できると解されています。

一方、取締役会においては、議決に特別の利害関係を有する取締役は、決議に参加することができません(会社法369条2項)。取締役の権限は、会社の利益のために行使されるべきだからです。

反対に、株主の権利は、自己の利益を図るための権利です。
したがって、原則として、個人的な利益を図るために議決権を行使しても構いません。
あまりにも不当な決議に対しては、決議取消の訴えなどの制度も予定されていますが、実際にはなかなか難しいようです。