
事業承継・M&A補助金は、事業承継やM&Aに伴う設備投資、専門家費用、PMI、廃業・再チャレンジなどを支援する制度です。旧制度名の「事業承継・引継ぎ補助金」から名称や枠組みが整理され、M&Aの実務に沿った支援内容になっています。申請にはGビズIDプライムとJグランツ対応が必要で、締切直前の準備では間に合わない可能性があります。横浜・神奈川の中小企業経営者は、補助金ありきではなく、自社の承継方針やM&Aの方向性を整理したうえで、早めに専門家へ相談することが重要です。
事業承継・M&A補助金とは
中小企業の経営者にとって、後継者不在、会社売却、第三者承継、M&Aによる事業の引継ぎは、早めに検討すべき重要な経営課題です。
「いつか考えればよい」と思っていても、実際には、買い手候補の探索、企業価値の整理、財務資料の準備、専門家への相談、契約条件の調整など、多くの準備が必要になります。
こうした事業承継やM&Aを後押しする制度として設けられているのが、国の「事業承継・M&A補助金」です。
事業承継・M&A補助金は、中小企業者や個人事業主が、事業承継やM&Aに際して行う設備投資、専門家活用、M&A後の経営統合、廃業・再チャレンジなどにかかる経費の一部を補助する制度です。
最新情報は、必ず公式サイトをご確認ください。
公式サイト:https://shoukei-mahojokin.go.jp/
旧制度名「事業承継・引継ぎ補助金」との違い
過去には「事業承継・引継ぎ補助金」という名称で公募されていました。横浜M&Aエキスパートの旧記事でも、2022年時点の制度として、経営革新事業、専門家活用事業、廃業・再チャレンジ事業が紹介されていました。
現在は、制度名が「事業承継・M&A補助金」となり、事業承継だけでなく、M&Aによる経営資源の引継ぎ、M&A後のPMI、廃業を伴う再チャレンジなど、実務上の重要な場面をより整理して支援する制度になっています。
名称が変わったことで、「事業承継=親族内承継だけ」という印象ではなく、第三者承継や会社売却、買収後の統合まで含めて検討しやすくなった点が特徴です。
最新公募の概要
2026年6月時点では、15次公募の情報が公式サイトで公開されています。
15次公募の申請受付期間は、令和8年6月19日(金)から令和8年7月24日(金)17時までの予定です。ただし、公募回や申請期間は今後変更される可能性があります。実際に申請を検討する際は、必ず公式サイトおよび各枠の公募要領で最新情報を確認してください。
15次公募では、主に以下の枠が設けられています。
- 事業承継促進枠
- 専門家活用枠
- PMI推進枠
- 廃業・再チャレンジ枠
それぞれ対象となる場面が異なるため、自社がどの枠に該当するかを早めに確認することが重要です。
| 事業承継促進枠 | 事業承継促進枠は、親族内承継や従業員承継などを予定している後継者が、引き継ぐ経営資源を活用し、生産性向上に資する設備投資等を行う場合に活用できる枠です。 たとえば、事業承継をきっかけに店舗や工場の設備を更新する、業務効率化のためのシステムを導入する、新たな販売体制を整える、といったケースが想定されます。 補助対象経費には、設備費、産業財産権等関連経費、謝金、旅費、外注費、委託費などが含まれる場合があります。補助率や補助上限は、補助事業の内容、小規模事業者に該当するか、賃上げを実施するかなどによって異なります。 15次公募の公募要領では、事業費の補助上限は800万円または1,000万円、補助率は条件により2分の1以内または3分の2以内とされています。廃業費を併用する場合は、上限300万円の扱いもあります。 |
| 専門家活用枠 | 専門家活用枠は、M&Aを進める際に必要となる専門家費用を支援する枠です。 M&Aでは、買い手・売り手の探索、企業価値評価、条件交渉、契約書作成、デューデリジェンスなど、専門的な実務が多く発生します。これらを自社だけで進めることは難しく、M&A仲介会社、FA、税理士、公認会計士、弁護士などの専門家の支援が必要になることがあります。 専門家活用枠には、買い手支援類型と売り手支援類型があります。 買い手支援類型では、M&Aにより他社の経営資源を引き継ぐ中小企業が対象となります。売り手支援類型では、自社や事業を第三者へ引き継ぐ中小企業が対象となります。 15次公募の公募要領では、買い手支援類型の補助率は補助対象経費の3分の2以内、補助上限は600万円以内とされています。さらに、デューデリジェンスに係る費用については、上限額に200万円以内を上乗せできる場合があります。 売り手支援類型は、原則として補助率2分の1以内ですが、物価高等の影響により営業利益率が低下している場合や、直近決算期の営業利益または経常利益が赤字の場合など、一定の要件を満たすと3分の2以内となる場合があります。 M&Aを検討する売り手企業にとっては、専門家費用の負担を抑えながら、適切な相手探しや条件整理を進められる可能性があります。 |
| PMI推進枠 | PMIとは、M&A後の経営統合を意味します。M&Aは契約が成立して終わりではありません。買収後に、人事、会計、業務フロー、取引先対応、組織文化などを統合していくプロセスが重要です。 PMIが不十分な場合、想定していたシナジーが出ない、従業員が離職する、取引先との関係が悪化する、といった問題が起こることがあります。 PMI推進枠は、M&A後の統合作業に必要な専門家費用や設備投資等を支援する枠です。15次公募では、PMI専門家活用類型と事業統合投資類型の公募要領が公開されています。 PMI専門家活用類型では、補助率は補助対象経費の2分の1以内、補助上限は150万円以内とされています。廃業費を併用する場合は、上限300万円以内の扱いもあります。 買収を検討する企業にとっては、「買って終わり」ではなく、「引き継いだ事業をどう成長させるか」まで計画することが、補助金活用のうえでも重要になります。 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業・再チャレンジ枠は、事業承継やM&Aに伴って一部または全部の事業を廃業し、新たな取り組みに進む場合などに活用される枠です。 対象経費には、廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リース解約費などが含まれる場合があります。 15次公募の公募要領では、再チャレンジ申請の補助率は補助対象経費の3分の2以内、補助上限は300万円以内とされています。他の補助事業枠と併用申請する場合は、各事業における事業費の補助率に従うとされています。 廃業という言葉には後ろ向きな印象があるかもしれません。しかし、赤字事業を整理して次の事業へ進む、一部事業を閉じて承継しやすい形に整える、といった前向きな再出発の選択肢として考えることもできます。 |
申請時に注意すべきポイント
事業承継・M&A補助金は、申請すれば必ず採択される制度ではありません。公募要領を確認し、要件に合った事業計画を作成する必要があります。
特に注意したいのが、GビズIDプライムとJグランツです。
本補助金の申請は、原則としてJグランツによる電子申請です。Jグランツを利用するには、GビズIDプライムアカウントが必要です。GビズIDプライムは取得に時間がかかるため、公募締切の直前に準備を始めると間に合わない可能性があります。
また、M&A支援機関に支払う費用が補助対象となる場合でも、登録制度に関する要件や、契約・発注・支払のタイミング、証憑書類の整備などを確認する必要があります。
補助金は、原則として事業完了後の精算払いです。つまり、先に費用を支払い、実績報告を行った後に補助金が交付される流れになります。資金繰りの計画もあわせて検討しておくことが大切です。
横浜・神奈川の中小企業が早めに準備すべきこと
横浜・神奈川エリアには、製造業、建設業、医療・介護、飲食店、サービス業、士業事務所など、地域に根ざした中小企業が数多くあります。
こうした企業では、後継者不在、代表者の高齢化、人材不足、取引先との関係維持、事業の選択と集中など、事業承継・M&Aに関する悩みが表面化しやすくなっています。
補助金を活用するためには、単に「申請できるか」だけでなく、自社の承継方針やM&Aの方向性を整理しておくことが大切です。
たとえば、次のような点を早めに確認しておくとよいでしょう。
- 親族内承継、従業員承継、第三者承継のどれを検討するのか
- 会社全体を譲渡するのか、一部事業だけを譲渡するのか
- 買い手として他社の事業を引き継ぐ可能性があるのか
- M&A後の統合作業まで見据えた計画があるのか
- 廃業や事業整理を含めた再チャレンジを検討する必要があるのか
- 財務資料、契約書、許認可、従業員情報などが整理されているか
補助金は、事業承継やM&Aを進めるための手段の一つです。補助金ありきではなく、「自社にとって最もよい承継・M&Aの形は何か」を考えたうえで、活用可能性を検討することが重要です。
専門家に相談するメリット
M&Aや事業承継では、相手探し、企業価値評価、税務、法務、労務、契約実務など、複数の専門分野が関わります。さらに、補助金を活用する場合は、公募要領の確認、対象経費の整理、申請スケジュール、証憑書類の準備も必要です。
早い段階で専門家に相談することで、自社がどの枠に該当しそうか、補助対象となる可能性のある費用は何か、M&Aの進め方として無理がないかを整理できます。
横浜M&Aエキスパートでは、横浜・神奈川エリアを中心に、会社売却、事業譲渡、後継者不在、第三者承継、M&Aによる成長戦略などの相談を受けています。
補助金の活用可能性を含めて、まずは自社の状況を整理することから始めてみてください。
申請前に確認すべきチェックリスト
- 最新の公募回と申請期間を公式サイトで確認した
- 自社が「事業承継促進」「専門家活用」「PMI推進」「廃業・再チャレンジ」のどれに近いか整理した
- GビズIDプライムを取得済み、または取得手続きを開始した
- Jグランツで電子申請できる体制を確認した
- 会社の決算書、確定申告書、履歴事項全部証明書などの基本資料を準備した
- M&Aや事業承継の目的を説明できるようにした
- 補助対象経費に該当しそうな費用を整理した
- 見積書、契約書、発注書、請求書、支払証憑などの管理方法を確認した
- M&A支援機関や専門家に依頼する場合、登録制度や補助対象要件を確認した
- 補助金は原則として後払いであることを理解し、資金繰りを確認した
- 公募要領、申請手引き、必要書類チェックリストを確認した
- 締切直前ではなく、余裕を持って申請準備を始めた
事業承継・M&A補助金は、後継者不在、会社売却、第三者承継、M&Aによる成長戦略を検討する中小企業にとって、有効な選択肢となる可能性があります。
一方で、どの枠に該当するのか、どの費用が補助対象になるのか、M&Aの進め方として適切なのかは、会社の状況によって異なります。
横浜・神奈川エリアで事業承継やM&Aを検討されている経営者の方は、早めに情報を整理し、専門家に相談することをおすすめします。
横浜M&Aエキスパートでは、会社売却、事業譲渡、後継者不在、第三者承継、M&Aの専門家活用に関するご相談を承っています。補助金の活用可能性も含めて、まずはお気軽にご相談ください。












