当法人はBATONZというプラットフォームの専門家登録をしています。
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今回は、当法人がBATONZのプラットフォームで手掛けた、ある富裕層向けのサービスのM&Aの後編をご紹介します。前回、最初の買い手候補との交渉が不成立となった後の続きとなります。
最初の買い手候補との交渉が不成立となり、すぐに時点の候補者と連絡を取りました。時点の候補者に対しては、「別の候補者との交渉を先行させます。先行する交渉の結果は、成立・不成立を問わず、必ずお知らせいたします」と説明していました。
当職が交渉再開を打診したところ、快く交渉を再開していただけました。時期としては、12月20日を過ぎていたと思います。そして、先方は、可能であれば、翌年の1月15日までに契約をまとめたいと申し入れてきました。
先方が交渉成立を急いだのには、理由があります。政府からの補助金です。事業承継については、政府から補助金を受けられます。先方は、契約打診時点で補助金を申請し、1月15日までに契約が成立すれば、補助金の交付が受けられることになっていたのです。
しかし、二番手の交渉順位となってしまったため、年末年始を含む25日で契約をまとめることになりました。はっきり言って、異例のハイペースでの交渉を目指すことになりました。
しかし、私の心配をよそに、交渉は順調に進みました。買い手側の意思が固かったからだと思います。意思を固くしたのは、やはり補助金の存在でしょう。もともと売り手のオーナーも、あまり条件面にこだわりがありませんでした。解散するよりも有利であれば、多くは望まないというスタンスです。こういう案件ばかりだと、非常に楽ですね。
年末年始で、基本合意書を作成することになりました。基本合意の成立後は、法的拘束力が生じます。簡単に解除することはできません。また、基本契約成立の時点から、対象会社に関しては、すべての情報がオープンになります。細かい契約書から、従業員の氏名から、すべての情報を明らかにして、事業の引継ぎの準備が進められていくことになります。
通常であれば、このタイミングで(あるいはもっと早く)、デューデリジェンス(DD)と呼ばれる作業があります。買い手が、対象会社の事業に関して、税理士、会計士、弁護士等の専門家による詳細な調査を行うのです。通常、事前に専門家に必要書類を交付しておき、後日半日から数日かけて、現経営者に対する質疑が行われます。
本件は、事業規模が小さかったこと、無借金経営であったこと、何より1月15日というデッドラインがあったことから、買い手がDDを行わないことを選択しました。DDには相当程度の費用が掛かるため、事業規模が小さい場合、もっといえば譲り受け価格が小さい場合、そのような判断もあり得まるのです。
というわけで、DDはやらないまま、最終合意を迎えることになりました。基本合意から最終合意までの修正点は、一つだけです。それは、基本合意で定めた株式譲渡価格のうち、一部を代表者の退職金として支給することとした点です。これは課税の問題ですね。退職所得は控除額が多く、税法上有利な場合が多いのです。
最終合意が成立すると、とりあえず我々のアドバイザーとしての役割は終わりです。もちろん、完全にノータッチというわけでもなく、いろいろと質問していただくのは構いませんが、それまでのように交渉の席に同席したりすることはなくなるわけです。
最終合意成立後、買い手のオーナーから、成功報酬と感謝の言葉を頂きました。
M&Aが成立すると、関係者全員が幸せになれるのが良いところです。買い手は、会社を解散せず、事業の対価を受け取ることができます。買い手は、ゼロから事業を組み立てることなく、当該事業を始めることができます。そして、我々も成功報酬が頂けます。大岡越前は三方一両損ですが、M&Aは三方一両得といってよいと思います。